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高見石小屋

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「いい場所にいますね」

高見石小屋の薪ストーブの前で飲み始めた私たちに声をかけてきたのは、小屋のご主人だった。目尻の下がった細い目と白い髭のナイスミドルなご主人だ。
なぜか褒められた気分になってエヘヘと笑いながら、たわいない話をする。
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何を話したのか忘れてしまったけど、ちょうど“山で星空観測”というテーマで取材にきていた雑誌記者さんたちの存在から星の話題になったとき、静かな雰囲気だったご主人が今度はとても生き生きと目を輝かせていたのは覚えている。
そしてあろうことか、それを見て私はときめいてしまったのだった。
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小さい小屋だからだろうか。
今まで小屋の主人というものは、存在は知っていてもお目にかかることはほとんどなかった。ましてや、こんな風に親しげにおしゃべりするなんて私の中では山雑誌や山の本の中だけのことだと思っていた。
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そういえば、小屋での受付もご主人自ら帳場に立っていたし、薪ストーブの上に置かれた登山者たちの手袋を乾いたものから順番にひっくり返してあげていたり、帰る人の見送りに寒い寒い外に出たり…こんなご主人がいるのかと軽く衝撃を受けたのだった。


夕食が終わるとご主人がランプを灯した。少し暗かった部屋がみるみるうちに ぽわん としたオレンジ色の灯りに包まれる。
本棚から1冊写真集を取り出し、そのランプの傍でパラパラと捲る。あ、ここは涸沢かな?ここは唐松岳でしょ?となんとなく想像しながらまったりと過ごしていると、へべれけになって二階で寝ていたはずの友人がバタバタと降りてきた。目が覚めたら私がいなかったので、「奴め!」と慌ててとんできたのだ。私には、全員が爆睡中一人だけ抜け駆けして星空を見たという前科がある。(たまたま目が覚めたら晴れていただけだったのだが)
今回は星空ではなく、この素敵なランプの灯りを独り占めしようかと思っていたのだが、そうもいかなくなってしまった。
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「撮ってあげるよ」というご主人のお言葉に甘えてみんなで撮影会が始まった。友人たちのカメラで一通り撮った後、じゃあ次、とご主人が私のカメラに目を向ける。
一瞬迷う。なぜなら、あいにく今回のレンズは望遠よりの単焦点レンズ。夕方薪ストーブの写真を撮っていたときも、同じように言われたのだったが、“ストーブと私”を撮ってもらうにはご主人にかなり遠くまで下がってもらわねばならず、そんなことはさせられないと断ったのだ。「えーなんでなんで?いいじゃん、撮ってあげるのに」と言われたことを思い出す。二度まで好意を無碍にできない。仕方がない。「これちょっと遠めなので…」とカメラを渡す。
モニタをのぞいたご主人は、おっ と少々面食らいながらも後ろに下がってくれた。そこはキッチンの出入り口で、出入りするスタッフにドアで挟まれながら撮るご主人を見て、本当になんていい人なんだろうかと私たちは感心したのだった。

「いいでしょ?とてもいい雰囲気で撮れるでしょ」

後からやってくる登山者たちにも同じように声をかけて撮影をする姿を見て、もしかしたら、ランプも薪ストーブも大好きで、自分の好きなものでみんなが感激するのが嬉しかったりするのかなと勝手に想像してしまった。なにより写真をとるときに、ランプの灯りや向きを調節するほどなのだから恐れ入った。








翌朝は前日の風雨が嘘のように晴れた。
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小屋の周囲には少しだけど樹氷もあった。
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快晴、ふかふかの雪、そして樹氷。今冬私の目標がすべて達成されたようだ。三拍子同時には揃わなかったけど、まあ良しとしよう。次のお楽しみだ。
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行ってきます。
木々の間から太陽が昇った頃にご主人に見送られながらスノーシューへ出発した。ふかふかの雪とは程遠いザクゴワの雪。ズボッと踏み抜くことはあっても、スノーシュー特有の浮遊感はまったくない。それでも、早朝の木漏れ日の中を歩いていると自然と顔がにやけてくるのだ。
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雪をザクザク言わせながら、森の中を歩き、麦草ヒュッテへ向けて谷を一気に下る。夏は岩だらけで通れない場所だ。下ったということは帰りはそれだけ登らねばならないのだが、そんなことはもう頭にない。麦草ヒュッテの可愛らしい赤い屋根に感激し、もはや道であるかどうか分からなくなるほどもっさりと雪に覆われたメルヘン街道に驚き、そして見事に一面の雪原に変わってしまった白駒池に歓声を上げる。
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池を渡った後の森の中で焚き火にあたりながら早めの昼食。お弁当として渡されたサンドイッチは、いちごジャムがシャーベットみたいになっていて震えながら食べた。パンでこうだったら、オニギリだとどうなってしまうんだろう。
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振る舞われた紅茶とホットワインを心ゆくまで飲む。実は、赤ワインの風味が鼻から抜けるときの感じとか、飲んだ後に舌に残るなんとも言えない渋みとかがとても苦手だったが、このホットワインはふんわりとやわらかい味でとても美味しかった。作り方を聞いたら驚くほど簡単で、ワインと砂糖とシナモンをくつくつ煮るだけ。シナモンの代わりに柑橘系の果物も相性が良くて、特にみかんの皮を天日干しにしたものがおすすめだという。少し甘めで温かい。陽が差す明るい森で、ほっとするひとときだった。
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気温が高く、葉についた霜もほとんど溶けてしまった頃小屋に戻った。5時間弱の歩行があっという間。小屋が見えたときには、えっもう終わり?と、とても残念だった。後はもう渋の湯に帰るだけ。名残惜しくもう一度高見石からの景色を眺めて、身支度をする。靴を履き、ザックを背負い、玄関先からご主人に声をかけた。

「お世話になりました。また来ます。」

外に出てスマートに出発をしたかったのだが、しまった、日焼け止めを塗り忘れていた。慌ててザックを下ろし日焼け止めを塗る。ご主人が見送りに出てきてしまった。早くせねば。ささっと仕舞い、さあ出発、と行きたかったが、一人がまだ小屋から出てこない。後で聞いたら、挨拶をするために小屋でご主人を探していたのだとか・・・どうも要領が悪くわたわたしている私たちを静かに待つご主人。ああ、すみません、本当に。

「下のほうは凍っているから気をつけて」
見送るご主人を背に、名残惜しいといいながら下山は一心不乱に一気に下りた。



夏からずっとテント泊だったのですっかり忘れていたけれど、小屋は人との距離が近い場所だなあと思い出した。私は、高見石小屋にまた絶対行くだろう。小屋の近くには目指す山頂がない。これ幸いと、薪ストーブの前でのんびりしよう。炬燵でごろごろしよう。そしてあのランプの灯りと星空を楽しみに行こう。















「山と山小屋」風にかっこつけて書いてみましたけど(全然違うか)


今回は、【初☆電車で登山】の旅

いい旅夢気分だね
西村京太郎だね

そうだそうだ!
“女4人高見石小屋スノーシュー殺人事件”だ!

ワイドビューしなのの時刻表に隠されたアリバイ
焚き火の跡の謎
トレースを追った先に見たものは…!?

だねー!!

なんて馬鹿なことを言いながらの山旅でした( ・∀・;)

今度は夏に行きたいな~
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「電車での移動に、関東の人みたいだ~とテンションが上がった」と同じツアーの関東から来られた方に話したら、変な顔されました( ・∀・;)イナカモノデスミマセン
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by asaasa32 | 2013-02-05 19:39 | 山歩記録
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